「一体、逆マウントとはなんなんだ」93歳、タンチョウ研究の第一人者が長年の観察で突き止めた驚くべき生態
2025年 9月15日 19:03 掲載
15日は敬老の日です。半世紀以上鳥の研究を行ってきた札幌に住む93歳の男性が学会で世界初の研究成果を披露しました。史上最高齢での発表、どんな内容なんでしょうか。
発表に熱心に耳を傾ける男性。正富宏之さん、93歳。日本のタンチョウ研究の第一人者です。
この日参加していたのは日本鳥学会。鳥の生態や保全などを研究する1912年設立の歴史ある学会で、年に一度の学術大会が今年、9年ぶりに北海道で開催されました。
専門家や学生ら全国から集まった230人余りが、最新の研究成果を披露。その中には正富さんの名前もあります。110年余りの歴史を誇るこの学会で、最高齢の発表です。
日本鳥学会2025年度大会 早矢仕有子会長)
「知る限りはそんな、そんな方はいらっしゃらないと思います。90代でまだ発表されていたっていうのは。ずっと現役でフィールド野外調査もされて今でも一線の第一線の研究者として発表されるっていうふうに、すごいと思います」
一体どんな発表なのでしょうか。
正富宏之さん
「これ、同じつがいですよ。同じつがいなんですけれども、どっちかがですね逆マウント。メスの方が後ろから、オスの方が羽を広げてる。見ただけでおわかりになりますか?」
1932年、日高の浦河町に生まれた正富さん。北大を卒業し、60年ほど前に釧路の博物館館長に就任して以来、タンチョウの研究を続けています。そして今回、長沼町で10年近く同じつがいを観察し続けた結果、驚くべき生態を発見しました。
通常、タンチョウが交尾をするときは、メスが羽を広げ、オスが後ろからメスの背中に乗る、マウントという行動をとります。ところが長沼町のつがいは逆のマウント、オスが羽を広げ、メスが後ろから乗るという行動を頻繁にしていたのです。他の鳥ではみられる行動ですが、タンチョウでの研究発表はこれまでに例がありません。
正富宏之さん)
「一体、この逆マウントとはなんなんだ。朝、ねぐらから出てきた直後に、まず正常なマウントが起きます。オスがちゃんとマウントする。次に、しばらくあくんですね、ダンスをしたりいろんなことをしてあいた後で、今度は逆マウントが起きる。受精っていうことのために意味があるのではないだろうかっていうのは、今のところ一番の有力な考え方だろうというふうに私は思っております。もう私は今年93歳になりましたから、もう後には学会出てくるとなるのは、おしまいになるんですけどぜひですね、この問題については、若い人たちに詰めていただければ大変ありがたいというふうに思っております。(拍手)ありがとうございました。」
参加者)
「すごく研究を楽しんでいらっしゃるのかな。私もカラスの研究をしているので、カラスでももしかしたら見られるのかなと、観察してみようと思っています」
「タンチョウをじっくりと観察されているなと、一言に尽きました」
「(研究者として)見習わなくてはいけないと思う」
衰えることのない正富さんの探求心。最後にこんな質問をしてみました。
正富宏之さん)
「(Q:93歳になっても学会で発表できる秘訣は?)何もすることないやと思ったらそれでおしまいだと思う。常に追求するみたいなことが必要かな。それはもう何でも構わないと思う」