札幌のチカホでアイヌ民族に関するパネル展 「差別的」と反対する市民らと主催者側が言い争いに
2025年 9月19日 17:50 掲載
札幌のチカホでアイヌ民族に関するパネル展が開かれ、差別的だとして反対する市民らと主催者側が言い争いになる事態となりました。一体どんな展示内容だったのでしょうか。
16日にチカホで開かれたパネル展。会場には「アイヌの史実を学ぼう」と大きく書かれています。この展示会を開催したのは保守系の右派団体、日本会議です。
日本会議北海道本部 伊藤昌勝理事)
「全然アイヌのこと知らない。見たことも触ったこともない。そんな話してたらそういう人がほとんどなんだわ、道民の。だからアイヌのことを知らないでいるわけにいかんじゃないのという気持ちで勉強するかと、それが始まりなんです」
その展示の内容を見てみると。
「アイヌについては2つの意見あります。(1)アイヌは北海道縄文人の直接の子孫である。(2)アイヌは13世紀ごろに大陸から渡来の異民族である。もし(1)であれば、全国の日本人と同じ縄文人の子孫となり、先住民とは言えないのではと思われます」
アイヌ民族が先住民族であることを否定するような展示。日本の近代国家が成立する前から北海道で暮らしていたアイヌ民族について、政府は2019年に制定した「アイヌ施策推進法」で先住民族と規定しています。
国立民族学博物館 マーク・ウィンチェスター助教)
「アイヌ施策推進法が制定されて6年も経っているいま現在、歪曲されたことが非常に差別的な言い方で展示されているものが広げられていることに対しては、非常に残念な気持ちを持って、何らかの異議を申し立てなければいけないと思ってきょうは来ました」
アイヌ民族の研究者で国立民族学博物館のマーク・ウィンチェスター氏。事実と異なる印象を与えかねない展示が公共の場で開かれることについて、憤りを隠しません。マーク氏はパネルの前で、集まった人たちを前に自ら問題点を解説しました。
国立民族学博物館 マーク・ウィンチェスター助教)
「至れり尽くせりの北海道旧土人保護法というようなパネルがあります。あたかも平等であったかのように、和人と同じような土地が与えられていたという理屈になっています。土地を受け取ったアイヌの方は、いい土地が和人に受け渡されたあとに、土地が分け与えられたわけですけど、水害地だったり、傾斜だったり、農地に向かない土地も付与されていたわけです。見かけには平等だって言ってますけど、そのような歴史的事実は全く書かれていないわけです」
主催者)
「展示会をやっているので」
集まった人)
「見させてもらってます」
「鑑賞しているんです」
開催に反対するために集まった人たちと、これを妨害だとする主催者側がにらみ合いになる場面も。主催者側が通報し10人近い警察官が出動する事態となりました。
多くの市民や観光客が行きかうチカホで開かれた今回のパネル展。
齋藤耕弁護士は憲法で「表現の自由」が保障されている以上、開催を禁止するのは難しいと話します。
齋藤耕弁護士)
「人種等を理由に攻撃する者が出てきている。そうゆう攻撃まで表現の自由として保障していいのかは非常に難しい問題。放置していいとは思わないけれど、直ちにだめだと縛ることはそもそもの表現の自由までが制限されることになりやしないか」
一方、アイヌ施策推進法ではアイヌ民族への差別を禁止していて、この法律制定を受けて札幌市が策定したアイヌ施策に関する計画では、「アイヌ民族の誇りが尊重されるまちの実現を目指す」と明記されています。
こうした中、市が管轄するチカホで今回のパネル展が行われたことについて、市の担当者は。
札幌市アイヌ施策課 熊谷大二郎課長)
「札幌市としては特定の人種や民族に対する差別というのはもちろん許されないという認識でおります。今回、様々な声が我々の方にも届いておりますので、そうした声を丁寧に聞きながらチカホの所管部局などと連携とって対応を考えてまいりたいと思っております」