「もう人なしでは生きていけない」閉園まで1週間 動物たちの行く末は…ノースサファリサッポロ
2025年 9月23日 12:01 掲載
9月末の閉園までおよそ1週間となったノースサファリサッポロ。今も残る100棟以上の無許可建築物。その建物の撤去を困難にしているのが動物たちの移動。なぜ動物の受け入れ先が見つからないのでしょうか。総力取材「追跡」です。
《閉園のきっかけとは》
動物との距離の近さから『日本一危険な動物園』とも紹介された札幌市南区の民間動物園ノースサファリサッポロ。2005年にオープンしましたが、今月末での営業終了が決まっています。閉園のきっかけとなったのは、園内の無許可建築物。園があるのは建物の建設が原則認められない市街化調整区域です。しかしノースサファリは、札幌市の再三の指導や勧告にも関わらず次々と動物を飼育する建物を作り続け、去年12月には、無許可建築物は183棟にのぼりました。今年2月、札幌市がより厳しい建物の「除却命令」を検討していることが明らかになり、一気に園の実態が問題となったのです。
■札幌市 秋元克広市長(2月)「これ以上はもう看過できないということで、強い行政処分を行う前提で検討し、当事者にお伝えした」
《なぜ違法な状態が20年続いたのか》
園の運営会社「サクセス観光」の星野和生前社長を知る人は、「やり手だった。エネルギーもすごいありますし、動きも軽いし、ぱっぱっぱと動く方で体が先に動くような、思ったらすぐ動くような方なんじゃないかなという感じ」と印象を語りました。当初、星野氏はHTBの取材に、無許可建築が増えた理由をこう話していました。
■星野和生前社長「調整区域に建物を建てる方々が(他にも)たくさんいた中で、そこはちょっと甘く考えてたのが一番の原因だったと思います」
■記者「Q.調整区域内ということは知っていたんですか?」
■星野前社長「知ってました、指導を受けたので」
■記者「Q.指導を受ける前は知ってた?」
■星野前社長「指導を受ける前はあんまりそういうことが詳しく分からなかったです」
しかしオープンの2年前に土地を売った男性は「建物が建てられない場所ということはちゃんと説明しましたよ。最初は自然界で遊びたい、アウトドアを楽しみたいということで売ったんです」と話し、食い違いを見せいます。
■来園者「勝手に建てたなら建てた人が全部撤去しないと」
■近くに住む人「違法にやっていたなら閉めるのもしょうがないかなと思いますね」
今月撮影された園内の映像です。「撤去予定」と書かれた獣舎とみられる建物もあります。去年、地面に直接置かれていたトイレは、今月、「稼働台車」と書かれたプレートとともに台車の上に載せられていました。しかしこのトイレは今月18日の立ち入り検査でも、再び違法建築物とカウントされました。5月の検査以来、飼育施設や物置など15棟が撤去されましたが、まだ118棟が残っていました。
■札幌市開発指導課 坪田修一課長「正直多いなという印象です。閉園された後も建物の除却は、建物がゼロになるまで我々の方で指導を続けます。動物関係が時間がかかっていると言っていました。園内の移動だけでもストレスになるらしくて」
《動物の移動先は?》
時間がかかっているのが、動物の移動です。今月の立ち入り検査で園内に319頭の動物が残っていて、去年12月からは半分以上減っています。園はどの動物がどこに移動したか一切明らかにしておらず、札幌市も把握していません。
HTBの調べで新たに、長野県の動物と触れ合うことができる民間の施設がカピバラやヒツジなどおよそ40頭を、また栃木県の施設は「一頭でも多くの動物の受け皿になれれば、との思いから受け入れを決めました」と、ウサギやマーラ、モルモットなど16種55頭を受け入れたことがわかりました。サクセス観光はそれぞれの施設内で動物とふれあうエリアを運営していましたが、今回、両施設がその動物たちの一部を引き取った形です。
《なぜ道内の動物園は受け入れないのか》
円山、旭山、釧路市、おびひろの道内4つの動物園は、一切ノースサファリからの動物を受け入れていません。円山動物園参与の小菅正夫さんは動物園の「種の保存」という役割を考えると受け入れは困難だと指摘します。動物園は血統登録されている動物を繁殖させ、その動物を得るために長期的な計画を立てていると言います。
■札幌市円山動物園 小菅正夫参与「将来円山に来るメスのトラがいるんですけど、それが来るのはもうちょっと先になる。でも決まっているんです。その個体は円山以外の所にはいかない。そこでずっとうちに来るのを待っている。そういうようにしてお互いに先の先まで計画して繁殖を進めているんです」
実際、閉園してから20年以上も受け入れ先が見つからない施設があります。2004年に閉園した定山渓熊牧場では、今も、運営会社が行き先のない2頭のクマを飼育し続けています。
■札幌市円山動物園 小菅正夫参与
「一旦人と一緒に暮らした動物はもう人なしでは生きていけないんだから。そうでしょ?イヌでもネコでもウサギでも昆虫でも何でも一緒ですよ。一旦動物園を始めて動物を飼い始めたらそれは最後まで自分の責任で面倒見ないと」
《問われるノースサファリの責任》
閉園後のノースサファリについて、HTBは星野氏に取材を申し込みました。これまで公の場に姿を見せず、責任問題など一切説明をしてこなかった星野氏。この日も何も答えずに立ち去りました。ノースサファリサッポロは、「動物の健康や安全に配慮しつつ動物を移動させ、残った動物についても適切に飼育する」とコメントしています。20年続けてきた施設と動物への責任に、どう向き合うかが問われています。
ノースサファリサッポロが今年3月に札幌市に提出した動物の移動計画です。去年12月時点で640頭がいて、今年度中に305頭を移動するとしていました。いま、計画を上回るペースで300頭以上の移動が進められています。しかし3月の段階では、残り335頭については移動計画が示されていません。札幌市は新たな移動計画の提出を求める方針です。