去年１０月、江別市の公園で発生した、男子大学生暴行死の発覚から２６日で１年。男女６人が強盗致死の罪などで起訴される中、裁判開始の目途がたっていません。その理由はなんなのか専門家に聞きました。

■伊藤榮祐記者：「午前６時です。ちょうど１年前この時間帯に男子大学生が倒れているのが見つかりました。現場には真新しい花束が手向けられています。」

事件発覚から２６日で１年…。現場となった江別市内の公園には手を合わせに訪れる人の姿がありました。

■献花に訪れた人：
「痛かったね、辛かったねということを思いながら、いろんな気持ちがあふれてきて、整理ができないまま手をあわせている状況です。」

去年１０月２６日朝、千歳市の男子大学生・長谷知哉さん（当時２０）が、全裸で倒れているのが見つかりました。

■長谷さんの友人：「真面目な子でした。２０歳になった人たちと飲んでいた時があったんですけれど、『酒飲まないの？』と言うと、『まだ２０歳になってないから』と言って断った。」

この事件で起訴されているのは、長谷さんの交際相手だった八木原亜麻（２１）被告、友人の川村葉音（２１）被告。そして八木原・川村両被告と友人関係にあった川口侑斗被告（１９）・瀧澤海裕被告（１９）、そして少年２人の合わせて６人です。

６人は１０月２５日夜から２６日未明までの間、長谷さんに殴る蹴るの暴行を加え、外傷性ショックで死なせたなどの罪に問われています。６人は暴行の際、長谷さんにこのように話していたとされています。

■被告ら６人（再現）
「全部出せ。全額」「クレジットカードもな」「銀行カードあんのか」

そして、長谷さんから奪ったクレジットカードでタバコや弁当を買ったとされています。また、川村被告は少年らとともにキャッシュカードで現金１２万７０００円を引き出したとされています。

事件の背景にあるのが、八木原被告と長谷さんの間の「交際関係のもつれ」です。

■八木原被告（再現）
「１年後に別れることを切りされ、その相談のために会った。」

大学３年生だった長谷さん。長谷さんは就職を機に道外に出ることを考えていたとみられています。

■大学の同級生（電話インタビュー）：
「パソコン使って作業するような仕事のインターンに行ったりして。たぶん東京ですね。北海道にこだわってる感じは特にしてないと思います。」

八木原被告は長谷さんからの別れ話について、複数の友人に相談を持ち掛けていてその１人が中学時代からの友人でもある川村被告でした。１０月２５日夜、２人で会っていた長谷さんと八木原被告は現場の公園へ向かいます。

八木原被告から「長谷さんと別れ話でもめている」と連絡を受けた川村被告も、当時一緒にいた川口被告らとともに自らの軽乗用車で公園に行き２人と合流。長谷さんに暴行したとみられています。

川村被告は当時、警察の調べに対してこのように供述していました。
■川村被告（再現）：
「八木原被告に対し長谷さんに謝ってもらおうと思った。」

札幌家庭裁判所は、川口・瀧澤被告ら少年４人を少年審判の結果「刑事事件が相当」とし逆送。特に、川口被告については「率先して暴行を加え、終始犯行を主導していた」などと「主犯格」として指摘しています。

■川口被告を知る人：
「中学校の時から学校でやんちゃな人と噂されることが多かった。問題を起こしそうな人だなと思っていた。」


被告６人は裁判員裁判で審理される見込みですが、事件から１年がたったいまも初公判のめどはたっていません。

刑事事件に詳しい中村弁護士は、その理由について…

■元検事・中村浩士弁護士：
「今回は共犯者が全部で６名という多数人が関わっている犯行になりますので、動機であったり、それぞれの主張が錯綜してると思います。争点整理と証拠の整理、これに非常に時間がかかっていることが予想されます。」

また、裁判の際の争点については・・


■中村浩士弁護士：
「今回強盗致死罪で起訴されていますが、金品を奪う目的、これはなかったんだということで、強盗自体の否定、それから死亡につながる暴行には関わっていないんだといったところで、傷害あるいは傷害致死罪の成立にとどまるという、そういう罪自体の成立についての争いこれが、まず予想されるところです」


６人に集団で暴行され、男子大学生の尊い命が無くなった凄惨な事件。事件の動機や背景が明らかになるのか、裁判の開始が待たれています。