【追跡】北海道江別市 パキスタン人への“誹謗中傷”ネット上で広がりロケット花火撃ちこみも 一体何が?
2025年11月 5日 22:22 掲載
約200人のパキスタン人が暮らす江別市。中古車の流通が盛んで、多くは中古車の解体や輸出の仕事に関わっています。
彼らは市内にモスクも建てました。仕事をするため日本のビザを正式に取得し、古物商の免許も得て10年以上住んでいる人もいます。
いま、パキスタン人の仕事場やモスクを撮影した動画がネット上にあがり、「不法占拠」や「不法労働」をしているのではという指摘が相次いでいます。
動画拡散のきっかけは、ノースサファリサッポロなどで問題となった市街化調整区域の違法建築。9月の江別市議会で取り上げられました。
■高柳理紗市議「市街化調整区域内に存在する礼拝所(モスク)に対して、これまで市が行政指導や何らかの対応を行った事例があるのか」
■建設部長「角山地区の礼拝所は、令和3年9月のパトロールの際に建物の存在を確認している。後日、関係者からの聞き取りにより、都市計画法に適合する建物でないことを確認したことから、違法建築物と認定し是正指導を行っている」
モスクは違法建築物でした。市によると、原則として建物の建築が認められない市街化調整区域で少なくとも76件の違法建築物が確認されています。パキスタン人が経営するとみられる会社も複数含まれていますが、大半は日本人が建てたものだということです。
しかしネット上ではすべてパキスタン人が建てたととられかねない情報が広がり、誹謗中傷が相次ぎました。複数のユーチューバーがモスクや仕事場を訪れて撮影を行い、「日本人は帰れと言われた」「モスクに連れていかれてパキスタン人に囲まれた」「パキスタン人に追いかけられた」といった内容の動画を配信しました。
さらに。
■男の声「外人こりゃぁ!」
先月中旬、市内の中古車販売店に勤めるパキスタン人が撮影した映像です。車でやってきた男たちが店の前で叫び爆竹のような音を鳴らしています。
こちらは翌日、店に設置された防犯カメラで撮影された映像。複数の車で乗りつけた男たちが、店に向かって次々とロケット花火を撃ち込んでいきます。
火事やけがなどにつながりかねない危険な行為。先月はこうした行為がほぼ毎日続いたこともあったそうです。パキスタン人はこの映像を警察に提出し、被害届を出しています。
去年、HTBの取材に江別のパキスタン人らは積極的に応じてくれました。しかし今回、パキスタン人は誰もテレビ取材に答えなくなりました。放送を切り取った映像がネット上で拡散され誹謗中傷や炎上に利用されかねないからだといいます。
そんな中、日本人の関係者に通訳してもらうという条件で、あるパキスタン人が取材に応じました。
■パキスタン人(声は通訳者)「(あるユーチューバーは)会社の看板とかを勝手に撮り始めた。それを見てあるパキスタン人の方が『勝手に写真撮るな』と注意した。それを『日本人帰れって言われた』と言ってるんじゃないか」
ネット上にあがる動画は事実と違うと話します。
■パキスタン人「(ユーチューバーは)モスクにいたパキスタンの人に『イスラム教に興味があるから中に入れさせてくれないか』とお願いした。パキスタンの人は『いいですよ』と(案内した)。その後、その人が配信したYouTubeを見ると、モスクに連れていかれて囲まれて怖い思いをした後でモスクの中に連れていかれて(という内容だった)」
また、あるユーチューバーはモスクや仕事場の敷地内に入り込み、パキスタン人に話しかけ一方的に動画を撮影したといいます。
■パキスタン人「最初からけんか腰というか、あえてもめるような言い方であおってきた。パキスタンの方が警察にその時、電話しました。警察を呼ぶと分かったらそのユーチューバーは逃げていったが、警察はその車のナンバープレートを教えてくれと。パキスタンの人はすぐに車を追いかけ、ナンバープレートを記録して戻りました」
その後、YouTubeには「パキスタン人に囲まれ、追いかけられた」といった内容の動画がアップされたといいます。
一方、違法建築物であるモスクについては、現在、パキスタン人の責任者らが今後について市と話し合いを進めているということです。
■パキスタン人「彼らは自分の土地なのであそこに建物を建てたが、本当は建てたらダメな場所だとは後から知った。モスクは、きちんと建物を建てていい場所に移せるよう場所を探しています。あそこには不法滞在者もいないし、もし(在留)カードも見せてくれと言うなら見せるし、不法滞在者がいればどんどん捕まえてくださいって警察に言う。そこで自動車を解体していいですよっていう許可、免許も持っている。パキスタン人をみんな悪い人と思わないでほしい」
なぜユーチューバーらはパキスタン人に関する問題を取り上げたのか。ひとりが取材に答えました。
■あるユーチューバー「日本人や外国人問わず、どうして違法状態に対処できていないのか?そうしたテーマで配信しているのであって、『私が排斥をしている』『扇動している』という指摘については、全く的外れであり、受け取り手の読み取り不足だと考えます。実際にこうした動きが私の動画を見て出てしまったのであれば、私も伝え方に課題が残ったとも思います」
江別市議は、動画による影響を懸念しています。
■野村和宏市議「動画に出てる情報はでたらめだとはっきり申し上げたい。善良に働いているパキスタン人はじめ外国人の皆さんを押しのけるような、出ていけみたいな風潮は絶対作るべきでない」
外国人労働者や多文化共生に詳しい専門家は、警鐘を鳴らします。
■北海学園大 宮入隆教授「花火や爆竹をやられたりされると余計に地域に対する不信感が広がり、パキスタン人が孤立し内側に入ってしまうのが一番危険。日本人の生活習慣などに全く興味を持たなくても生活できることになれば、ちょっとした出合い頭でけんかになることがありえる。日々お互い交流する、接点を持つのが一番重要」
今後、外国人が増加するといわれる道内。江別の問題は、決して見過ごされるものではありません。



























