釧路湿原メガソーラー問題 法令違反が相次ぎ発覚 道の行政指導25回超の“異常事態” 希少生物に影響は?
2025年11月19日 19:30 掲載
釧路湿原周辺のメガソーラー問題。建設を進める事業者に相次いで法令違反が発覚し、これまでに道が25回を超える行政指導をしていたことが分かりました。なぜ指導に応じないのか、異例の事態を追跡しました。
釧路市でメガソーラーの建設を進める、日本エコロジーの松井政憲社長。法令違反が相次いで発覚し、今月4日、道から聞き取り調査を受けました。
松井政憲社長:「関係法令の部分で一部届け出の提出が遅れたり、今後どのようにやっていくのか、しっかり話をさせていただけたらと思います」。
大阪に本社を置き、全国でメガソーラーの建設を手掛ける日本エコロジー。釧路市内では15カ所で計画中です。問題となっているのは、釧路湿原にほど近いこちらの建設現場。4.2haの土地に、6600枚のソーラーパネルを設置する予定です。
希少生物の生息調査が不十分だった他、森林の違法伐採や法令に定められた道への届け出が遅れるなど、問題が相次いで発覚しました。道からの中止勧告を受けて工事が一時中断される中、先月、盛土規正法を巡る新たな疑惑が浮上しました。
木村隼人釧路市議:「どう考えても3月17日というのが、つじつまが合わないなというのはすぐ思った」。
木村隼人市議が指摘するのは、日本エコロジーが工事を始めたとされる「日にち」についてです。盛土規制法が釧路市に適用されたのは、今年4月。基準を超える盛土工事を行う場合、4月より前の着工であれば道への届け出だけで済みますが、4月以降の着工になると知事の許可が必要になります。
日本エコロジーは、「3月中旬に着工した」と道に説明。本来であれば、4月21日までに届け出しなければなりません。しかし、届け出はおよそ5カ月後の9月12日でした。このメガソーラー建設が全国的に大きな問題となり、8月に道と釧路市が行った調査で不備が発覚。道が指導してから、ようやく提出に至りました。
これは、日本エコロジーが道に提出した作業日報です。着工日である3月17日には、「土木シートひき」を行ったと記録されています。しかし、3月17日の釧路市は、暴風雪警報が発表されるほど大荒れの天気で、土木シートを敷く作業はできなかったはずだと、木村市議は主張します。
木村市議:「3月17日というところで、4月1日が法律のスタートの日なのでこれは許可逃れなのかなと」。
道は、法令違反を見逃したのではないか。先月、鈴木知事の定例会見で記者が質問すると…。
鈴木直道知事:「10月20日、事業者に対してヒアリングなどを行って状況を確認をしたということで担当より報告を受けている。質問のような心配は当たらないというふうに報告を受けています」。
道によりますと、先月20日に日本エコロジーの下請け業者に聞き取り調査をしたところ、「3月17日は土木シートを敷いたのではなく、シートを切断した」と内容を修正したということです。さらに、「3月21日から木を伐採した」と説明。作業日報の内容にも矛盾がなかったことから、道は法令違反には当たらないと判断しました。
ところが、これとは別の法令違反が新たに発覚します。
加納貴之副知事:「再三の指導にも関わらず現段階で実行に至っておらず、指導に従っていないのはこれまでに例のないことであり、極めて遺憾と言わざるを得ない」。
日本エコロジー・松井政憲社長:「承知しました。速やかに対応させていただきます。申し訳ございません」。
土壌汚染対策法では、盛り土をするなどして一定規模の土地に変更を加える場合は、着工の30日前までに道に届け出をするよう求めています。しかし、日本エコロジーが道に届け出したのは、期限からおよそ7カ月遅れた9月5日でした。
道は、土壌汚染の恐れがあるとして調査をするよう指導。先月3日、日本エコロジーは調査結果を提出しましたが、道は分析項目が不十分だとして追加調査を求めていました。しかし、再三の指導にも関わらず適切な調査は行われず、道は今月20日までに調査計画書を提出するように再度通告。指導に従わなければ、法に基づき調査の実施を命令するとしています。
道環境生活部・谷内浩史部長:「そもそも届け出が遅延している。本来は工事の着手前に届け出をし、土壌調査をやらないといけない。そもそも届け出が遅延している中で調査も行われていないということですので、我々としては『いつまでやってほしい』ではなくて、『今すぐやりなさい』ということです」。
松井社長は、追加調査の指導に応じなかった理由について「分析項目の選定に時間がかかっていた」と説明。速やかに、調査計画書を提出するとしいます。
先週、メガソーラーの建設現場には、餌をついばむタンチョウの姿がありました。獣医師の齊藤慶輔さんは、十分な土壌調査が行われていないため、タンチョウが汚染された土を体内に取り込んでしまうのではないかと危惧しています。
猛禽類医学研究所・齊藤慶輔獣医師:「万が一、土壌汚染成分である鉛やヒ素、六価クロムが混ざっていれば、中毒の危険があります。繁殖妨害や傷病原因になるような状態であれば、由々しき事態」。
度重なる行政指導にも関わらず、法令違反を繰り返す業者に対し、なぜ道は法的強制力のある「行政命令」に踏み切らないのか?この問題に詳しい弁護士は。
室谷悠子弁護士:「指導にするのか命令をするのかは、基本的には裁量判断。下手に命令を出すと、事業者からかみつかれたり『違法だ』と訴えられかねない。指導で改善してもらえればいいという判断があるんだろうけれども、いくつもの違反行為が出ているのできちんと規制権限を行使すべき」。
これまで3つの法令で違反を繰り返し、道から25回を超える指導を受けてきた日本エコロジー。今後、適切な調査は行われるのか。日本エコロジーは「道の指導に従った上で、工事の早期再開を目指したい」としています。



























