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交通事故で最愛の9歳の息子を失った父親 同じ悲劇を生まないため歩みを始める姿 「過去ではなく未来を」

仏壇の前で手を合わせる札幌市豊平区の西田圭さん50歳。
息子の倖(こう)さんを交通事故で亡くしました。

9歳という短い生涯でした。

肩紐が千切れたランドセル。袋に入れられたままのスニーカーや服。

事故当日、倖さんが身に着けていたものです。

廣瀬美羽記者「現場の道路は車どおりが比較的多くなっています。横断歩道のすぐ先には車の破片が広がっていて今まさに警察官が捜査しています」

事故が起きたのは去年5月16日午前8時過ぎ。

登校中に青信号で横断歩道を渡っていた倖さんがワゴン車にはねられました。

運転手の66歳の男は糖尿病を患っていて、治療のためインスリンを注射してワゴン車を運転。

しかし、事故当時、注射後に必要な食事を摂らず低血糖により意識もうろうの状態でした。

倖さんは心肺停止の状態で病院へ搬送され、およそ1時間後に息を引き取りました。


西田圭さん「ほんとに人間って真っ白になるんだという感じで何も考えられない状態になって」
「今でも信じられませんし今でも悪い夢を見ている途中であってほしいなって思っています」
「3人兄弟の末っ子っていうところもあったのでとにかく人を笑わせるのが好き。家の中でもそうですし、家の周りでも本当いつも友達と遊んでいてもう明るく賑やかひょうきんな子だったので、息子の倖のおかげで家の中はいつも、いい意味で騒がしいというか、ほんとに明るい家庭にしてくれたんだなと」

事故後、過失運転致死の罪に問われた運転手の男。
下されたのは禁錮2年6か月の実刑判決でした。

西田圭さん「全く罪のない子どもが交通ルールを守っていたにも関わらず自分勝手な判断を積み重ねた加害者によって命を奪われたのでその罪の重さが2年6か月というのは全く理解ができない」

なぜ事故が起きてしまったのか。

西田さんは「心情等伝達制度」を使って服役中の運転手の男と手紙のやり取りを重ねました。

「心情等伝達制度」とは刑務所職員などを通して被害者側の想いを加害者に伝えることが出来る制度。

加害者からの返答は職員を通じて書面で渡されます。

男が自分の罪とどのように向き合っているのか。
西田さんの問いかけに対して男は…。

男「薬の飲み方と扱い方に問題がありました。私の人生は事故が起こったときに終わったと考えています。どこかで防ぐことができなかったのかと毎日考えています」

西田圭さん「これから先、服役している2年6ヶ月の中で大きく変わるような期待も持てなかったっていうのが率直な印象です」
「自分の判断の甘さにまだしっかり向き合えていないんじゃないかなっていう風に思いました」

「心情等伝達制度」を使っても西田さんの心の傷が癒えることはありませんでした。

家族にとって太陽のような存在だった倖さん。

東京に単身赴任していた西田さんでしたが、事故のあとは倖さんを失ったことによる強い悲しみや苦痛が続く「死別障害」と診断され、16年勤めていた会社も今年6月に退職しました。

現在はフリーランスとして働いています。

「おはようございます」「行ってらっしゃい」

倖さんが通っていた小学校近くの通学路で児童の登校を見守っています。

「息子が望んでいるんじゃないかな、ということでやっぱり友達が同じ目に遭わないでほしいなと思うし、僕自身同じような事件事故が起こるのが本当に辛くて、少なくとも通学路で事故は起こさない。」
「元気に明るく毎日学校に通ってほしいなという思いだけですかね」

交通指導員となり、ほぼ毎日小学校に通っています。

その通り道には倖さんが亡くなった事故現場があり西田さんは毎日、静かに手を合わせています。

同じような悲劇を生まないために交通指導員以外にも行っている活動があります。

この日は札幌を離れ北広島市へ。

訪れたのは北広島東部中学校。

西田さんは交通事故被害者遺族として道内各地で講話活動を行っています。

西田圭さん「今日私がみなさんに一番伝えたいのは私たちに起きた悲劇ではありません。今、世の中で起きている事実を見つめてその先にある未来をどう生きるのかということではないかと思っています」「過去ではなく未来について考えることが大切です」

「命の大切さを学ぶ教室」と題された講話。

全校生徒およそ380人の前で倖さんが亡くなった事故の経緯を話し、加害者と被害者を生まないよう、未来のために行動してほしいと訴えました。

西田圭さん「みなさん何があっても生きてください。不幸のどん底、もう立ち直ることが出来ないそう思ったとき、誰か支えになってくれる人がいます」「みなさんおひとりおひとり誰もが安心平和に生きられる未来をどうか作ってください」

講話を聞いた生徒「加害者も被害者も誰もがなりうるっていうのを聞いてまず加害者さえ生まれなければっていう」
「加害者になる1歩前で常に立ち止まることは大切だと感じた」

「今後の社会を作り上げていくのは私たちだと思っているので、そもそも社会の仕組みやルールをもっと見直していくべきなんじゃないかなって思います」

西田圭さん「中学生はこれから大人になる一歩手前の段階なのでこれから先、加害者にも被害者にもどっちにも転んでしまう可能性があると思う。」
「これからも引き続き倖と一緒にできるだけ多くの方にメッセージを届けていきたいと思う」

失われた命は二度と戻ってきません。
交通事故を生まない社会。
ハンドルを握るすべての人間が、その責任から目を背けないことから始まります。

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