知床観光船事故・運航会社社長の第2回公判 船体検査員「ハッチに違和感は感じてなかった」と証言
2025年12月10日 18:51 掲載
知床沖の観光船沈没事故の運航会社社長、桂田精一被告の裁判で、事故前に船体を検査した検査員が10日に出廷し、沈没原因とされている船体の不具合について「違和感を感じていなかった」と証言しました。
大原麻潤記者)
「桂田被告を乗せた車が釧路地裁にやってきました」。
10日に開かれた運航会社社長、桂田精一被告の2回目の裁判。
起訴状などによりますと、運航会社社長 桂田精一被告は、悪天候が予想される中、運航管理者などでありながら運航の中止を指示せず、知床沖で観光船「KAZUI」を沈没させ、乗客乗員を死亡させた業務上過失致死の罪に問われています。
先月12日の初公判で桂田被告は、
桂田被告)
「当日の朝『KAZUI』の出航に関して、船長から荒れる前に引き返すと言われ、それなら大丈夫だろうと思い出航しました。しかし事故は起きました。私にはこの内容が法律に反するか分かりませんので、法律家に判断していただきます」。
また弁護側は「業務上過失致死は成立しない」などと無罪を主張しました。
そして10日、
高橋海斗記者)
「グレーのスーツに身を包み、第二回公判に出廷した桂田被告。検察側の証人の話に時折手元の資料を見ながら耳を傾けていました」。
10日の裁判では、検察側の証人として海上保安官が出廷。事故当時の状況を調べるため「KAZUI」と同じ大きさの巡視艇で航行を再現する実験を行ったと証言しました。
海上保安官)
「波を見てそれにともなう揺れを予測するのは困難、それに対する反応が遅くなると思われます。その結果壁に体をぶつけたりして、けがをする可能性があると思います」。
また実験の際に撮影した動画も廷内で公開されました。
乗客家族)
「(実験の)動画を見た時に、激しい船の揺れと波ですごく、どんなに怖い目にあったのかすごく考えて胸が苦しくなった」。
乗客家族)
「引き返すのであれば、高波をくらうまえに早く引き返さなければならんかった。会社側の判断ミスです」。
観光船「KAZUI」は、船前方の「ハッチ」の不具合が原因で沈没したとされています。
これは運輸安全委員会の報告書に載っているハッチの写真で、事故8日前に撮影したものです。よく見るとハッチのふたが浮いています。およそ2センチの隙間でした。
運輸安全委員会は、このハッチのふたがしっかりと閉まらず、海水が入り込んだことが沈没の原因と指摘しています。
事故の3日前には、国の検査代行機関・JCIが検査を行っていましたが、目視のみでハッチが良好な状態であると判断し、開閉試験を行わず、ハッチの不具合は見過ごされていました。
10日の裁判では、実際に事故前に検査を行ったJCIの検査員も出廷。事故以降、公の場で検査員が証言するのは初めてのことです。
検察側)
「運輸安全委員会の写真ではハッチが2・3センチ浮いているが、検査されたときは」。
検査員)
「違和感を感じていなかったので、開いてていなかったと思う」。
検察側)
(Q:目線を下げて真横からは見た?)
検査員)
「真横からはみていない」。
検察側)
「Q:それはなぜ?」
検査員)
「斜め上から開いていないことが確認できた」。
沈没した原因とされているハッチの不具合について、検査員は「違和感は感じてなかった」と証言。これに対し傍聴した乗客の家族は、
乗客家族)
「みんながきちっとしていたら、こういう事件が起きなかった。どこが悪かったのか正して、今後こういうことが起きないようにしてもらいたい」。
この裁判では合わせて19人の証人が出廷する予定で、判決は来年6月17日に言い渡されます。



























