創業130年「函館どつく」 巨大船づくりの現場へ潜入! 造船業界に追い風が吹く中 未来への布石は
2026年10月12日 19:23 掲載
造船所「函館どつく」は今年、創業130周年を迎えます。
「函館どつく」のモノづくりの現場とこれからに迫りました。
創業130周年、北日本最大の造船所「函館どつく」。
主に造っているのは、全長およそ180mのばら積み船です。巨大な船はどのように造られているのでしょうか、現場に潜入です。
前田愛奈記者
「すごいです。鉄の板をいま、作業員がバーナーで熱しているようです」。
船体の複雑な曲線を生み出すため、鉄板を熱し水で冷やす工程を繰り返します。機械だけでは難しい加工をミリ単位の精度で仕上げていくのです。
函館どつく総務部 小番 一広さん
「毎日鉄と向き合っているので、このくらい火を入れて水をかけるとこのくらい曲がるというのを経験で習得していっていると思う」。
経験を積み重ねて身につける職人の技。一人前になるまでには数年かかるといいます。
加工された鉄板は、ほかの部材と組み合わされ、船体の一部となる「ブロック」になります。
前田愛奈記者
「いやすごい迫力です。工場の中から船の先頭部分の大きなパーツが大きなクレーンで運び出されています。今ゆっくりゆっくりと動いています」。
持ち上げられていたのは船首部分。重さは90トンあります。
こうしたブロック、およそ120個をクレーンで1つ1つ、2か月ほどかけて組みあげ、少しずつ船の形にしていきます。
函館どつく総務部 小番 一広さん
「今からこの150トンクレーンに乗りたいと思います」。
Qさっきまで積み上げていたクレーンですよね?
「まさにそのクレーンです」。
特別にブロックを積み上げるクレーンの上部まで案内してもらいました。高さはおよそ30m、足がすくむ高さです。操縦室に入ってみると…。
前田愛奈記者
「とっても見晴らしがいいです」。
ここから巨大なブロックを操ります。
クレーンの操縦士
Q高いところは怖くない?
「最初は怖かったんですけど慣れるんですよ。
Qこっちに衝撃ないんですか?
「あります。やっぱり振動でクレーン揺れちゃう。大きいブロックがうまくつれた時はうれしい」。
およそ8か月、長年培われた技術を注ぎ込んだ船は海へ。「函館どつく」の造船技術はその丈夫さなどが世界的に評価され、いまや3年先まで受注は埋まっているといいます。
函館どつく 服部 誠社長
「本当にやめるかというぐらいの危機的な状況でもあったんです」。
危機を乗り越えた「函館どつく」が未来へ向けて取り組む新たな一手とは。
創業明治29年。函館の港で船を作り続けてきた「函館どつく」。
この130年、幾度となく荒波に直面してきました。
日本の造船業は戦後、イギリスを抜いて世界一の座に上り詰めました。しかし、1970年代のオイルショックで船の需要が急減。円高も重なり、「不況業界」に転落すると、その後は中国と韓国に追い抜かれました。
函館どつくも赤字経営が続き、大幅に人員を削減するなど事業規模を縮小。2009年には、大型船を造るための巨大クレーンすら撤去せざるを得なくなりました。
それでも、大阪の大手造船所「名村造船所」の子会社になるなどして造船所と技術を守り続けました。そして近年、円安などで業女績は右肩上がり。今年3月期の決算は売上高およそ336億円。4期連続の黒字となりました。
さらに国からの「追い風」が。経済安全保障の面から、国が造船の後押しを決定したのです。
日本造船工業会 斎藤 英明専務理事
「日本の船会社が運航している船はほぼ100%日本が造っていたんですけれども日本の海運会社も韓国や中国の造船会社に発注をし始めて 7割から8割までに落ちています。もう一度日本の造船業を再生強化していこうという流れで最近は造船業極めて注目を浴びているという状況です」。
国は2035年までに国内の建造能力をおよそ2倍にする目標を掲げ、10年間で3500億円規模の設備投資を支援すると公表。政府は、函館どつくとその親会社にも最大およそ500億円の助成を決めました。
函館どつく 服部 誠社長
「千載一遇のチャンスであるし我々としては生き残りをかけた機会」。
函館どつくは、助成金を使い、いまは使っていないドックを復活させるなど、今後、船をつくる能力を2倍に引き上げることを目指しています。
しかし、設備だけで船は造れません。人材の確保が急務です。
函館どつく 服部 誠社長
「本社従業員だけで約600人いるんですけど、この規模感でも約1000人までは引き上げていかないと(建造能力を2倍は)できないんじゃないかなと。(函館どつくは)やっぱり苦しい時も長かったのであまり良いイメージを持たれていないのかなという思いもあったりもして」。
先月、130周年を記念して開かれた見学会。普段は入ることのできない造船所の内部が特別に公開され、5000人以上が訪れました。
札幌から
「見たことないのがたくさんあった。こんな大きい船造っているのすごいなと思って興味が湧いた」。
函館市民
「楽しかった!」
函館市民
「子どもたちも喜んで自分の住んでいる町でこんな立派な船が造られているんだなと話していました」。
130年、函館のまちとともに歩んできた造船所「函館どつく」。
荒波に耐えたいま、吹き始めた追い風を、未来につなげられるのか。正念場を迎えています。
函館どつく 服部 誠社長
「(函館は)もともとは我々の事業からみなさん発展されていったと思う。我々がしっかりしないと工業系の会社も元気がなくなっちゃうというのも分かっているところ。そういう灯を絶やさないためにもしっかりしないといけないなと身の引き締まる思い」
【スタジオ】
この特集は、朝日新聞と共同で取材しました。
朝日新聞でも、造船業がなぜいま注目されているのか、詳しく伝えます。
14日の朝刊(北海道内版)に、掲載される予定です。


















