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ハナタレナックス

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STAFF ROOM

すっかりご無沙汰してしまいました。

2011年04月28日(木)

お久しぶりです。

杉山です。

まさか、こんなに更新が滞ってしまうとは

自分でも思っていなかったのですが...

 

あの日以来。

受け止めきれない現実の数々にただ圧倒され、

何かを書こうにも言葉がなく、

言葉を探す力もなく、

ただただ自分の無力を突きつけられるばかりの毎日に

すっかりパソコンのキーボードから遠ざかる日々が

続いてしまいました。

 

そしてそればかりじゃなく、

春の番組改編でHTBでは朝の新番組もスタートし、

どうにも上がらない心を引きずりながら

粛々と準備に忙殺される日々も重なり

気づけばもう、北海道に桜が咲く頃となっていました。

 

今、ようやっと少し落ち着きました。色々なことが。

もちろんまだまだ整理のつかないこともいっぱい抱えたままですが。

そして思いのままにパソコンの前にいます。

 

実はあの日、まさにあの日。

このスタッフルームに日記を書こうと

僕はパソコンの前にいました。

 

今年の2月から3月にかけて、たまたま東京出張が多く重なったこともあり

音尾君の「ORANGE」や(芝浦ブラウザーの前にやってた舞台です)

安田君の「テンペスト」を観劇できるチャンスに恵まれ

それを見て感じたこと考えたこと涙したことなど、

色んな思いを言葉にしてみようとして

出だしの数行を書き始めたまさにその矢先でした。

 

札幌もずいぶん長いこと揺れていました。

北海道に来て、こんなに長い地震は初めてに近かったので

さすがにちょっと怖くなったほどでしたが、

被災地ではその何倍も何十倍もの恐怖が、

その時すでに襲っていたのですね。

間を空けずに全国ニュースから流れてきた信じられない映像の数々。

結局、筆は止まったまま、僕の中の時も感覚も止まってしまいました。

 

音尾君の出演した「ORANGE」というお芝居は、はたして何の偶然か、

阪神大震災で、自らの命を懸けて人命救助に当たった

消防レスキュー隊の皆さんの実話を基にしたお話でした。

PEOPLE  PURPLEという劇団を主宰する宇田学さんという方が

現地で取材を重ねて書き上げ、2004年に初演を果たしたいう作品。

パンフレットによれば、

以来、毎年のように1月に公演を続けてきたんだそうです。

 

自分の家族が被災しているにも関わらず自らの任務を最優先する人、

目の前にいる人を救えずただ見送るしかない無念さ、

天災ゆえ、どこにもぶつけようのないつらさ、悔しさ、憤り、、、

お芝居中、ただただ泣きました。

ボロボロに。

どうしようもない思いが胸に迫り、

拭いても拭いても涙がこぼれてくる、

そういうお芝居でした。

思えば大震災の約1か月前、2月の中旬のことでした。

 

僕は東京出身ですが、札幌に就職して20年余り。

年に1~2回ほど、仕事のついでにしか帰京する機会もなく

滅多に家族に会うこともないまま時を過ごしてきました。

日帰り出張の時は、実家まで足を伸ばすのでさえもちょっと億劫で

連絡もせずにそのまま帰ってしまうなんてこともしばしばでした。

 

そんな中、この音尾君のお芝居を見て

家族への思いが突然いっぱいになってしまって。

「会える時に会っとかなきゃ」

「ほんのわずかな時間でも、元気だよ、と顔を見せなきゃ」

人生、いつ、何があるか分からないのだから、と。

実家に帰りたい気持ちが自然と胸に溢れました。

 

その夜、「せっかくだから食事でも」と音尾君に誘われたのですが

そんな訳で、お芝居が終わった直後から無性に家族に会いたくなり、

老いゆく母親の手料理を無性に食べたくなり、

誘いを断って実家に帰ったのでした。

 

帰ったら帰ったで何のことはない、

40過ぎまで結婚もせず孫の顔すら見せてあげられない自分を詫びるでもなく、

久しぶりだというのに結局テレビを見ながらただ雑談する程度なのだけれど。

長生きしてくれてありがとう、なんてことも照れくさくてとても言えないのだけれど。

 

それでもいいんだと、思いました。

大したことのない日常が、

実感すらない当たり前のような小っぽけな幸せが

振り返ってみればきっと大切な自分の人生として

積み上げられているのだろう、と。

 

そんなかけがえのない日常が、たくさんの人の小さな幸せが、

たった1日であんなにもあっけなく壊されてしまった。

自然の怖さ、一言でいえばそうかもしれない。

誰が悪い訳でもない。

避けようのない天災だからこそ、

どこにもぶつけようのない怒りや苦しみや悲しみや

やるせない思いに胸を締め付けられるばかりでした。

 

どうすればいいのだろう。

今、自分に何が出来るのだろう。

多くの人が同じことを思っていたと思います。

その答えすら見つからないもどかしさに苛まれていたと思います。

 

僕はいまだに、その答えが分からない。

 

明日なんて誰にもわからない。

だから、するべき事がある。

宇田さんが「ORANGE」に込めた思いだそうです。

 

では、僕がするべき事って、何だろう?

分からない。

 

でも、家族や、自分の大切な人たちを

当たり前のように大切に思い、大切にする。

言葉に出して。

行動にして。

命が生かされている限り、毎日を、責任持ってちゃんと生きる。

自分の人生も、仕事も、いとおしい全てのものに真摯に向き合うこと。

そういうことなのかな...って今は考えるようにしています。

 

だからこの「ハナタレナックス」も、

今まで以上に大事にしていきたいと思います。

僕らは僕らなりに、僕らの手の届くすべての事を、大切に。

 

今まさに苦しんでいる人のために

何の役に立てるのかも分からないけど、

そこに、どんな意味があるのかも分からないけど、

僕らにできることはそれぐらいしかないから。

 

震災から12日後に、実は既に一度ロケをしました。

そして実は明日、またロケがあります。

もしかしたらまだ、心の底から笑うことはできないかもしれない。

もしかしたらもう震災前の自分には戻れないのかもしれない。

 

テレビやCMはずいぶん普通に戻ってきたようですが、

世の中の自粛ムードはそんなに簡単には吹き飛ばないと思う。

でも、無理せずそのままの気持ちでいいのかな、と思う。

ただ、今を大事に生きていれば。

 

1日も早く、そして一人でも多くの笑顔が戻りますようにと祈りながら、

それぞれの胸の中に色んな思いを抱えながら、

それでも僕らは生きていかなきゃいけないから。

大切に、頑張って自分たちの仕事をしてきますね。

明日のロケ分の放送は5月~6月以降になると思います。

今持てる力を全部出して作りますので楽しみにしていて下さい。

 

最近のHTBでは、各番組ごとに目標視聴率というものが設定されていて

それをクリアすると編成部という部署から毎月賞金がもらえるんです。

テレビは記録より記憶だから!とか強がって、

この賞金とは長年縁の無かったハナタレなんですが、、、

実は、去年の11月からなぜか視聴率の好調が続き

5ヶ月連続でこの目標を達成してしまいました。

なんと、番組史上初めてのことです。

自慢ではありませんよ。

ぜんぶ、支えて下さる皆さんのおかげです。

 

ただ賞金と言ってもそれほど大したものではありません。

ほんのわずかな、雀の涙ほどのものですが

それでも、これは視聴者の皆さんから頂いた愛情の一つだと思い、

そのお裾分けをほんのちょっとでもしたいと思い、

賞金はすべて被災地への募金に充てさせて頂きました。

ささやかだけれど、番組の気持ちとして。

 

今月もまた、取れるかもしれません。

そして来月も。

もし取れたら、全部、今後も募金に充てさせて頂こうと思います。

ほんのわずかでも、誰かのためになるのなら。

支えて下さる皆様への恩返しになるのなら。

 

もちろん決して視聴率がすべてではありませんし

視聴率を取るためだけのつまらない番組作りはしたくありませんが。

 

でも僕らが頑張って面白いものを作って、

それが視聴率という形でひとつの評価(愛情)を頂けるのなら

頑張ろうと思います。

そしてそのお裾分けを被災地の方々に送り続けていきたい。

それも、僕らに出来る小さなことの一つだと思うから。

 

という訳で、北海道の皆さんは可能な限り夜更かしして

生でじゃんじゃん見て下さいね。

どんな形でも、そうやって皆さんと心を繋げられたら、嬉しいです。

ハナタレはまだまだ未熟で力不足ですが、

だからこそ皆さんの力を、ください。

僕らもみんなで力を合わせて助け合いながら頑張っていきます。

 

人というのは案外たくましいもので、

右足をくじいたら、その分左足が頑張って歩こうとします。

傷が出来れば、そこに口を当てて舐めます。

お腹が痛んだら、手でさすります。

 

自分の命を自分で守る。

自分の体同士で癒し合い、助け合う。

当たり前のことなのかもしれません。

日本という国を人の体に例えるなら、

傷んだ東北や北関東を、

比較的被害の少なかった北海道や

あるいは関西や四国、九州や沖縄が

左足となり口となり手となり守っていく。

当たり前のことですよね。

自分たちの命なんだから。

 

あの日以来、他にもつらくて悲しいことがたくさんありました。

未だに受け止めきれない現実もまだまだたくさんあります。

僕自身にも。

 

でも、1日も早くなるべくちゃんと笑えるように、生きていきます。

何はともあれ、ハナタレ班は元気です。

まもなくDVD第2滴にも、とりかかります!年内の発売を目指して...!

 

P.S.

スーちゃんへ。

僕のささやかでとっても冴えない少年時代をテレビの向こうから彩り、

素敵な夢を見させてくれたスーちゃん、ありがとう。

底抜けに明るくて、でも時に大人の哀愁と憂いをまとったキャンディーズが

僕は大好きでした。

そしてあなたの、最期の力を振り絞った命のメッセージから

生きてく責任感と勇気をもらいました。

笑顔を忘れません。

本当に本当に、ありがとう。