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相棒セレクション 相棒19 #15【再】
「長い間、電池が切れていたようですね」。時計店の店主の言葉に、私は思わず苦笑いをした。
この時計を父に買ってもらったのは、もう30年以上も前だ。
色とりどりの文字盤の時計が並ぶ中で、
17歳の私には似つかわしくない、秒針のない黒の文字盤の時計を手に取った。
恐る恐る見た値段に胸がドキンとして、すぐケースに戻した。
しかし、また黒の時計に手が伸びては小さなため息をつく私に、父が言った。
「好きなものを選んでいいんだよ」。
母のちょっとびっくりした顔と、父の笑顔に伴われて、時計は私の腕に収まった。
高校生活の2年間、汽車通学のお供をしてくれたその後、
秒針が必要な職業に就いてからは、特別な日に着ける「よそゆきの時計」として活躍した。
家が火事に見舞われた時も、その日が特別な日だったおかげで奇跡的に手元に残った。
大事にしたいと思っていたけれど、子育てしながら働く私に、特別な日はそう多くはない。
気がつけば引き出しの中で時を止めていることも多くなった。
ある日、止まっている時計を見て、急に悲しくなった。
「約束する、大事にする」。17歳の私の声が聞こえたような気がしたからだ。
父との約束を守っていない自分が情けなかった。
電池を入れ替え動きだした時計は息を吹き返したように見えた。
この時計と一緒に仕事しよう。時計として働いてもらおう。
今の私に黒の時計はよく似合う。〆
94歳の母が白内障の手術をした。かなり前から、あまり見えていなかったらしい。
でも「年を取れば誰でも見えなくなるもの」と手術をずっと拒み続けていたのだ。
とうとう30センチ以上先は見えなくなり、いずれ失明すると言われ、
やっと手術を受け入れてくれた。
が、いざ手術となると、白内障だけでなく目そのもののダメージが大きく、
2カ所の眼科で、手術をしても失明の可能性は大、と言われた。
残り少ない人生、失明したらかわいそうだし、介護する私も大変になる。
そんなことを考えながらも、覚悟を決めて手術を受けた。
幸い成功し、よく見えるようになった。
家に帰ってきた母は、私の顔をしみじみ見ると、ぽろぽろ泣きだした。
よく見えるのがうれしくて、泣いているのかと思ったら、
「あなたがこんなに年を取ってしまったのは、
私が苦労をかけたからね・・・」と涙声で言う。
そうか、今まではしわやシミが見えなかったので、母の中の私は若いままなのだ。
実際の、しわ顔の私を見てびっくりしたのだろう。
年々年を取り、少しず増えていったしわなので
「年相応なのよ」と、母の責任ではないことを説明し、
夫と「手術しない方が良かったかも」と笑った。
今では、新聞もよく読めるようになった母の横顔を見ながら、本当にうれしく思っている。 〆
買い物を終え、スーパーから出て来た駐車場で、
私を待つかのように立ち止まっている人に気付いた。
70歳にもなろうかと思うほどの男性である。その顔に見覚えはない。
歩き去ろうとした時、その男性から声をかけられた。
「着物はいいですね。懐かしくて。
私の母親がね、いつも着物を着ていたものだから、つい思い出してね」
私はとっさに気の利いた言葉を返せず、
「ああ、かっぽう着ですか」と自分の普段着に目を落とした。
「いやー、かっぽう着ばかりでなく、今こうして着物を着る人はいないものね」
そして再び「母親がいつも着物を着ていたものだから」。
私は、「そうですか。昔のお母さんは、そうでしたよね」と答えた。
短い時間だったけれどゆったりと交わした言葉だった。
「いやー、何ということもないのに、すみませんでしたね」
「いいえ、こちらこそありがとうございました。お気を付けて」と別れた。
せめて家までの道すがらは、お母さんと2人連れでありますように。
立ち去るその背中に、お母さんを恋い慕う老齢の男心を垣間見る思いがした。
そうか。私を待っていたのではなく、はるかなお母さんに会っていたのだ。
私の普段着姿が、あの人の亡きお母さんをしのぶきっかけとなったのなら、
明日も身に付けるかっぽう着は、洗いざらしのきれいな物でありたいと思った。
ふと気が付くと、私もまた、遠い母と2人連れの家路であった。 〆