専門家「もっと事故は全国で起きているのではー」札幌・園児死亡事故から1年半 教訓を未来にどうつなぐ?
2026年 4月21日 19:22 掲載
札幌市北区の認可保育園で当時1歳の男の子が給食を喉に詰まらせて死亡した事故から1年半が経ちました。事故の教訓をどう未来につなげていくのか、現場で行われている救命処置の訓練を取材しました。
おととし10月、札幌市北区の認可保育園アイグラン保育園拓北で当時1歳1ヵ月だった蓮くん。給食の豚肉を喉に詰まらせて窒息、死亡しました。
母親 南さん
「搬送当時、もう人間が亡くなった後の色というか普通の人間の肌の色ではなくて、本当に全身に呼吸が渡ってないような肌の状態の色で。ずっと「蓮、ママ来たよ」って、「大丈夫だよ。戻っておいで」って。ずっと声かけてたんですよね」
専門家などがまとめた検証報告書では離乳食から形のある食べ物へと変わり始める時期の園児には1センチ以下の豚肉が適切だったとしています。しかし実際に蓮くんに提供されていたのは1.5センチから2センチほどの大きさにカットされた豚肉でした。
蓮くんのそしゃく力が園内で共有されていなかったとしています。
一方、園はワーキンググループの聞き取りに対し肉の大きさなどについて母親に説明して「承諾」をもらっていたと話しています。
検証報告書では喉が詰まった後の救命処置にも問題があったことが指摘されています。
マニュアルでは事故が起きた直後、大声で他の職員などを呼び、同時に119番通報をすることになっていました。しかし発生直後、救命処置などが先に行われて、通報は発生から2分ほど後になったということです。
検証報告書では「この遅れが命に関わることも十分考えられる」と指摘しています。
母親 南さん
「電話出たら「お母さんすみません」しか言ってこない先生がいて「なんですか事情話してください」って言って、「すみません、本当にすみません、蓮くんが蓮くんが」っていう感じだったのでもう喋れないような感じになっていた。担当の先生が」
さらにマニュアルに書かれていたのAED処置も実際には行われていませんでした。園の中で組織的なマニュアルの共有がされておらず、
当時対応した保育士も「マニュアルに目を通したことがない」と話したということです。
園側はこの報告書に関し「内容を真摯に受け止め、改善すべきところは改善していく」とコメントしています。
事故から1年半。
市内の保育園ではどのような救命処置の訓練が行われているのか。
札幌市白石区の認定こども園幌東。年に1回以上、全職員が窒息事故の救命訓練を受けることになっています。
今回は0歳児クラスで園児が給食を喉に詰まらせる事故を想定した実習訓練が行われました。
保育士
「Aくん大丈夫? すみませんAくんが喉を詰まらせたみたいです」
事故に気が付いた保育士が職員に状況を知らせます。
看護師
「窒息です。先生、職員室と救急車に連絡お願いします」
保育士
「モモ組のAくんが窒息しました。お願いします」
「救急車を呼びます」
保育士は消防の通報と職員室にいる園長先生たちへの連絡を同時に行います。報告を受けた園長先生たちはすぐに保護者へ連絡し、
他の保育士たちに応援を呼びかけました。
救急車が到着するまでの間、応急処置を行います。他の保育士がAEDを持ってきて園児に電気ショックを与えます。
保育士
「救急車到着しました」
訓練の後、反省会が行われました。
美山富子園長
「まずは子どもの命が最優先。そして私たちが慌てずそのときの判断を
きちっと考えてやる。声を出すのをもうちょっとやった方がいいかなと思います。相手に伝える、周りに伝えるということでそういうときの声が大きくなっても大丈夫なので」
保育士
「最初から最後までの何か起こった時の前後っていうのがやっぱり実際に
動いてみないと分からないところがある」
看護師
「やっぱり看護師でも、いざそういうところになったらすごくどうしようっていう感じにはなると思うんですけども、そういう時でも落ち着いて対応していきたいなって思います」
こちらの保育園では蓮くんの事故のニュースを受けて、緊急時の役割担当を決めるカードを用意。また各部屋に設置されている固定電話には119番のマニュアルもつけられています。
美山富子園長
「起こるかもしれない「かもしれない運転」を私たちはしています。それが想像ができないと、事故した時にパニックになったりとかそんなつもりはなかったってなる」
一方実習訓練は法律上義務ではなく、保育士などの養成機関でも座学のみとしているところもあるといいます。
東洋大学健康スポーツ科学部 内山有子教授
「ガイドライン、マニュアルの整備プラスやっぱり実習が大事だなと思います。そうじゃないといざ目の前でぱたっと子どもが倒れたり窒息した時に動けないですよね」
東洋大学 内山有子教授
「あなたの園で起きたことは明日かもしれないし5年後かもしれないし、どこかで絶対起きますと。抱っこして落としそうになったことがある、危なかったよって言ったら、他の人も私もその経験あるってなって、じゃあ階段に手すりつけましょうとか滑り止めつけましょうってやらない限り、必ずどこかで絶対起きるのでその共有がちゃんとできるかってことが大事なんじゃないかなと思います」
警察はおととしの窒息事故を業務上過失致死の疑いで慎重に調べを進めています。
■実態がよく分かっていない窒息事故
内山教授によると窒息事故として報告があがっているのは「死亡」や「治療に30日以上かかった」ケースで、すぐに息を吹き返したなどの「ヒヤリハット」や入院が数日に留まった場合などは報告にあがってこないということです。
そのため全国でもっと窒息事故が起きている可能性があり、実態はよく分かっていません。




























