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ご挨拶 嬉野より皆様へ

2019.02.25

私はちょうど今、ドラマ「チャンネルはそのまま!」の第5話を見終わったばかりでこれを書いています。だから少々気持ちが昂って、これから書き上がる文章は、とうてい挨拶文といえるものにはならないかもしれません。でも、見終わって私は思ったのです、本当にこのドラマを作って良かったと。

思えば、今から50年前。在札のテレビ局が札幌の都心部にある大通公園沿いに集中するなか、なぜかHTBだけは、それら他局を遠望するような郊外の、まだ、りんご畑の残る牧歌的な住宅地の高台のてっぺんを新天地に選び、そこに社屋を構えたのです。爾来、50年、風景こそ移り行きましたが、高台の社屋まで伸びる急な坂道を長年通い続けた社員たちは、のどかさに包まれて、いつか呑気と鷹揚とをその社風にしてしまったように思えます。

そして迎えた昨年秋、HTBは今更のように札幌の中心部、大通公園沿いに新社屋を得て移転してゆきました。社員たちが去って旧社屋は空っぽになりましたが、それからはドラマ「チャンネルはそのまま!」の舞台であるHHTV北海道☆テレビのセットとして息を吹き返し、まるで旧社屋を丸ごと映像に記録するかのように、53日間に及ぶドラマ撮影は始まったのです。

もちろん私は、53日続いたロケの間、現場で弁当を食うくらいしか能のない男だったわけですから、作ったなどとおこがましいことの言える立場にはないのですが、それでも長年HTBで働いてきた者として、本当にいいドラマになったなぁと心の底から思うのです。このドラマの中には言葉では端的に言い尽くせないものが写し取られているように思うからです。でも、言葉で言い尽くせないその何かは、ちゃんと受けとめられるものであり、私の心にいつまでも残り、私を慰め続けてくれるものなのです。

2019年1月12日、香川県高松市のホテルの一室で、私は5話を監督した藤村くんに呼ばれ、彼のパソコンの画面で編集し終えたばかりの第5話を見せてもらいました。私は、第1話、第2話、第3話、第4話と続く流れの最後に本日第5話を見て、途中から涙が溢れてしかたありませんでした。感動したのです。

ドラマ「チャンネルはそのまま!」の中で生き生きと躍動しているもの、それは、話題作り、時代の流行などといったものからもっとも遠い場所にある、もっともっと普通で、素朴な日常と、人の心です。明るく、おおらかで、真剣に生きる、人の心です。労わりと、慰めと、包み込んでゆく人の優しさです。そして笑い。それらを一気に牽引していくのが佐々木倫子さんが「チャンネルはそのまま!」というマンガで作った雪丸花子というキャラクターだったと思います。

その難しい役を芳根京子さんは、あの細い体でパワフルに演じ、見事に花子になりきったまま全5話という道のりを疾走してくれました。「本当にきょんちゃんは凄いと思います」。相手役の山根一を演じてくれた飯島寛騎くんが自分に言い聞かせるようによく呟いていたこの言葉を私は思い出します。

我々は、開局50周年を記念するこのドラマに、HTBの最大の功労者である大泉洋に出演して欲しかった。大泉洋も、その思いに応えてくれ、忙しいスケジュールの合間を縫って、たった2日という限られた撮影日数の中で、原作にはない、ドラマオリジナルのキャラクター蒲原正義を演じるため、早朝の飛行機で急ぎ現場に入り、いきなり役になりきってクライマックスのシーンの撮影に臨んだのです。

私は、彼がアカデミー賞俳優になってからも、どうしても親戚のおじさんのような目でしか映画の中の彼を見ることができなかったのですが、今回ばかりは彼の演じる画面の前で思わず膝を正す思いでした。素晴らしかった。ローカルテレビ局の中でも弱小なHTBが、最後まで失速することなくこれだけのクオリティーで全5話を駆け抜けることができたのは、本広監督のお陰です。本当にありがとうございました。本広監督をはじめ、今回ドラマに関わってくださった全キャストと全スタッフに、この場を借りて感謝いたします。 どうぞこの先、本作「チャンネルはそのまま!」が、多くの人の目に触れますよう願ってやみません。


プロデューサー 嬉野雅道拝



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「さぬき映画祭」でも配布し、大変ご好評頂いたパンフレット。
掲載されている内容を一部、こちらで順次ご紹介していきます。