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監督と監督 <本広監督編>

2019.03.01

『水曜どうでしょう』ファンだった本広監督
初タッグに「面白いものが作れる!」

以前から『水曜どうでしょう』のファンを公言している本広監督。2008年に、劇団「ヨーロッパ企画」主催の映画祭で藤村&嬉野のディレクター陣と対面したときは「わっ!水曜どうでしょうの2人だっ」とテンションが上がったという。そこから10年。公私ともに親交を重ね、今回初めて映像作品でタッグを組むことになった。
HTBから総監督として声が掛かったことについて、「50周年事業として位置付けられたこの作品で、おふたりから(ドラマに)呼ばれた時は『これは面白いものが作れる!』と、うれしかった」
実際に撮影を終え、編集作業に追われる中で「これまでの僕の経験から言えるのは、新しい何かが起きる時は、そこに自由がある。整備されていない未開の地で、新しい人と組んで、新しいことをやる時は、必ず面白いものが始まる時。今回は、そんな始まりを感じています」と、顔をほころばせる。

監督を5人起用!でも数人で1話を完成させる手法

連続ドラマでは、数人の監督が参加し、各話を担当することは珍しくない。しかし、本作は1話の中で複数の監督が撮るというスタイルを採用。それは、1話の中に監督5人分の"雪丸花子"が生まれる可能性もある。現場で混乱はなかったのだろうか?
「それぞれの得意分野を、シーンごとに活かしていこうと考えました。アクションが得意な監督が撮った『走る花子』はやっぱり格好いいし、花子が『イェァーーッ』と絶叫する姿もありますけど、あれは藤村さんの演出。僕のなかにあんな演技プランはなかったし、素晴らしかった(笑) 各話を1人の監督で撮りきるという発想を捨てたのは、すごくいい効果を得ました」
「実は、撮影が続く中、早々に自分の分を撮り終えて東京に帰っていった山本監督が『ロケ最終日の大泉さんのシーンは、やっぱり僕が撮りたい!』って、札幌に戻ってきたんですよ! 僕に内緒で! ! 僕が撮りたがってたの知ってたから! !(笑) 総監督は、見守ることが重大な仕事となりましたね」

「北海道出身」がキーワードに
熱気が加速する青春群像劇

今回のスタッフやキャストたちを選ぶときのひとつの選択肢、ひとつのキーワードとして「北海道出身者」があったという。札幌出身で札幌で青春時代を送って東京で活躍する美術監督。札幌を離れたばかりで東京で活動している若いキャストたち。どちらの世代にも「青春時代が札幌にあった」という共通項を、本広監督は重視していた。
なりふり構わず素っ裸の感情で青春時代を突き進んだ人、そんな熱い人たちを見ながら、どこか冷静に過ごした人。それぞれの青春が息づく札幌の現場は、周囲の絆にも影響を与え強固にしていく。「現場に熱気がありましたからね。芳根と宮下は、撮影後に部屋で2人で話し込み、何度も夜を明かしてました。酒も飲まずにですよ! もう、修学旅行の夜ですよね(笑)」
また、本作は「大人の青春群像劇でもある」と断言。新社会人になりたてのころ「睡眠時間を削ってガムシャラに走って、ぶっ倒れてまた起きて...。そんな下積み時代は僕にもあります。すごくきつくて、でも支えてくれる仲間もいて。そんな誰にでもある『懐かしい時代』を、重ねて観てもらえる作品です」

[プロフィール]
本広克行 KATSUYUKI MOTOHIRO
1965年生まれ。香川県出身。テレビドラマの演出家を経て、1996年に『7月7日、晴れ。』で劇場映画監督デビュー。代表作『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、ヒット作多数。アニメーション作品や舞台など幅広い分野で、監督、演出家として活躍している。