25年の"ぼやき愛"
大泉洋がいた「HTB最後の日」

2019.03.11

2018年11月6日。ドラマのクランクアップと同時に、
旧社屋は50年の役目を終えた。この日、スタジオには大泉洋がいた。
ぼやき続けて25年。大泉が「最後の日」に寄せる思いを追った。

ぼやきで笑いを誘うも感慨深さを吐露

大泉の出世作『水曜どうでしょう』で何度も収録を重ねた場所でのクランクアップ。スタジオに「カット! お疲れ様でした」の声が響き渡り、拍手のなか花束を受け取った大泉は、「僕が主役かと思いました(笑)」とうそぶくも「二十歳の大学生だった頃から通い続けたこの旧社屋で、最後のシーンを撮らせていただいたというのは、大変ありがたいことでした」と短くあいさつした。

その後、すぐにマスコミが集まった隣のスタジオで記者会見に参加。ドラマ制作の話を知ったのは、世間と同タイミングの「朝の情報番組」だったこと、さらに過密スケジュールの合間をぬって出演を承諾したら、撮影シーンもセリフも膨大だったことなど、ぼやきの連続で笑いをさらう。

しかし会見の司会を務めた佐藤麻美(『おにぎりあたためますか』で共演)から、旧社屋が最後の日を迎える心境を尋ねられると「この会社に関しては私は悪態しかつきませんけども」と、憎まれ口で前置きしつつ、「ただ。この社屋が今日で終わりと言われると、確かに私にとっては感慨深いですね」と、一変してしんみりとした口調に。

鮮明によみがえる「数少ない青春時代」

スタジオを見渡し「このスタジオでは、『onちゃんカレンダー』を撮りましたね。私がカメラマンになって一眼レフを構えて、"いいねぇ〜"なんて言いながらね(笑)。ここで、ミスタさんと安田さんが準備している姿を見てましたね」と懐かしそう。

背後に立つ嬉野Pと顔を見合わせ、「あと『試験に出るどうでしょう』もココでしたね。安田さんは泊まりましたからね(笑)。『ハナタレナックス』の初回もこのスタジオで撮りましたね」と、10年以上も前の収録を鮮明に語る。

学生時代からテレビ業界へと踏み出した大泉にとって、この旧社屋での日々は「数少ない青春時代といっていいんじゃないでしょうか」。懐かしそうに目を細めた。 「この社屋が今日で最後だっていうこと。その一番最後の日に、この社屋をロケ地とするドラマで、このスタジオのシーンを用意していただいたというのは・・・悔しいですけど、感謝ですね。最後に立ち会えたことは、嬉しいです。感謝です」。

最後の最後はぼやき封印

この夜、旧社屋1階ロビーにてドラマの打ち上げが行われ、大泉も最後まで参加。スタッフやキャストたちと談笑し、ときに嬉野P、福屋Pと三人でスピーチも披露するなど、サービス精神たっぷりで会場を沸かせた。

終始和やかなムードに包まれるなか、締めは大泉とその場にいた全員で「HTB旧社屋 ありがとーー!!」と拳を突き上げ一斉唱和。大泉は挙げた両手を下ろすと、壁に向かって立ち、胸の高さで手を合わせた。少し頭を下げ、振り返らずに背を向けたままマイクを置いた。目を潤ませていたようにも見えた。

夜10時。社屋の電源を落とすその時まで、撮影スタッフがスタジオから出ようとしない。「あともう少し、この場所でー」そんな離れがたいそれぞれの思いをのせて、鳴り止まない拍手とはなむけの言葉に送り出されるように、HTB旧社屋は50年の歴史に幕を下ろした。

※ミスタさんと安田さん
【 ミスタさん 】 クリエイティブオフィスキュー 鈴井貴之さん。『水曜どうでしょう』の番組内では"ミスター"の愛称で親しまれている。
【 安田さん 】 TEAM NACSの安田顕さん。『水曜〜』では準レギュラーとして度々登場し、数々の伝説を残している。