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50周年で本社移転
「愛された旧社屋を映像に残す」
地方テレビ局HTBが挑んだ連ドラ制作への道

2019.02.27

北海道テレビ放送(HTB)の取締役編成局長 福屋渉に、単独インタビュー。50周年ドラマの仕掛け人が語る福屋の思いとは?

50周年のお祭り騒ぎで終わらせない
「その先に繋がるものを」

――漫画『チャンネルはそのまま!』の実写化は、50周年事業のひとつとしてどのような経緯で決定しましたか?

50周年事業を実施するにあたり、企画を社内募集しました。様々な企画が提案され、選考を担当したのは、開局した年に生まれ、2018年度に「50歳の誕生日を迎える社員6名」。選定基準は『50周年として始まったものが、その先につながる企画』としました。僕は、周年行事をお祭り騒ぎで終わらせたくなかったんです。出てきた企画のひとつにこのドラマ化がありました。局舎の移転に伴い、旧社屋そのものをロケ地としようという案です。ドラマを作ることで旧社屋の映像を永遠に遺すことができる。そこに惹かれましたね。

思い込みで進める強さ「井の中の蛙ルール」

――ローカル局とは思えない豪華なプロジェクトですが、始めるにあたり不安はありましたか?

僕が50年に1回しかできないことに勝負をかける! という宣言をした時、腰が重たい人もいました(笑)。でも、付き合ってくれる人もいた。僕と僕の周りで一緒に走り出した人達をみて、背中を押されるように動き出す人もいました。結局、フィールドなんて関係ない。これまで出会った"仕事と真剣に向き合ってる人"たちがいてくれて、現場は進んでいきました。そんな中でつくづく感じたことは、「この作品は、ローカル局が立ち向かうにはデカすぎる作品」だったこと(笑)。多分、僕たちは「原作漫画を実写化する」ことへの恐怖心もなければ、定石通りの進め方さえ分かっていなかった。もちろん何度も立ち往生もしました。しかし、逆をいえば、全く知識がない井の中の蛙ルールで突き進んだからこそ、完成したんだと思います。自分が見えているものだけを「これだ!」と思い込んでる奴の方が未来を作れるということを、プロジェクトを通して教わりました。

雪丸花子 = 芳根京子「彼女でしかありえなかった」

――人気漫画であるがゆえに、実写化の制作発表後に「主演の雪丸は誰が?」という予測がSNSなどで飛び交いました。

キャスティングについては、最初に社内から希望をとってみました。原作における取材対象がHTBだったこともあり、特に雪丸花子役に関しては高い関心があったからです。その時から「花子=芳根京子」という意見が圧倒的に多かった。次に本広総監督を含め、関係者で会議という流れです。ローカル局のドラマ・・・。本当に受けてもらえるか? 芳根さんに決定した時は、本当に嬉しかったです。撮影が終わって、どのシーンを見ても「花子がいる」。主演としての彼女は、現場の空気作りも素晴らしかった。ご本人の気質、努力に現場は大いに救われました。この役は「彼女しかいなかった」と、今も確信しています。


エグゼクティブプロデューサー 福屋 渉